1.私立歯学部6年生の約半数が留年を経験している
現在の歯学部の教育内容は歯科学の進歩に伴って、親世代の頃とは学ぶべき量が全く違います。その結果、文部科学省の調査によると、私立歯学部6年生で一度でも留年・休学の経験のある学生の割合は44.9%となっています。
なんと私立大学歯学部6年生の半数近くがこれまでに留年や休学を経験しています。歯学部6年生ですから、ここまで順調に来ていても最後の卒業試験は侮れません。さらに歯科医師国家試験も待ち受けています。歯学部卒業と歯科医師国家試験までを考えると更に厳しい数値が出ていますが、それについては後述します。
また、「一度でも」ですから、中には何度も留年を繰り返している歯学部生もいるでしょう。
ちなみに国立大学歯学部6年生で一度でも留年・休学を経験している学生の割合は17.2%となっています。優秀とされる、国立大学歯学部の6年生でも2割近い学生が留年や休学を経験しています。それだけ現在の歯学部は厳しいのです。
2.国公立歯学部を含めてストレート卒業、国試一発合格は53.4%。私立歯学部では20%台が3校も
文部科学省は歯学部について、「修業年限内での国家試験合格率」も公表しています。
「歯学部で、6年間一度も留年しないで歯科医師国家試験も1回で合格した学生の割合」という意味です。これまで述べてきた「6年生」ではなく、卒業と歯科医師国家試験合格までのデータです。
2024年に実施された、第117回歯科医師国家試験の結果からのデータで、国立-公立・私立の全29歯学部の合計で「ストレート卒業、歯科医師国家試験も一発合格」の学生の割合は53.4%でした。国公立大学歯学部を含めて53.4%とほぼ半数ですから、非常に厳しい数字です。
文部科学省は大学別に「ストレート合格率」を公表していますが、第117回歯科医師国家試験では「6年間一度も留年しないで国試一発合格」の学生の割合が23.9%の大学もありました。
修業年限内での歯科医師国家試験合格率 編入学を除く (文部科学省)
※117回の合格率が40%以上の歯学部のみ掲載
(%)
大学名 | 115回 | 116回 | 117回 |
北海道大学歯学部 | 66.0 | 79.2 | 82.7 |
東北大学歯学部 | 62.0 | 66.7 | 75.5 |
7東京科学大学歯学部 (東京医科歯科) | 56.6 | 75.5 | 73.6 |
新潟大学歯学部 | 65.0 | 87.5 | 65.0 |
大阪大学歯学部 | 56.6 | 66.0 | 73.6 |
岡山大学歯学部 | 85.4 | 75.0 | 91.7 |
広島大学歯学部 | 60.4 | 71.7 | 75.5 |
徳島大学歯学部 | 62.5 | 52.5 | 67.5 |
九州大学歯学部 | 56.6 | 56.6 | 54.7 |
長崎大学歯学部 | 68.0 | 72.0 | 78.0 |
鹿児島大学歯学部 | 71.7 | 77.4 | 96.2 |
九州歯科大学 | 71.7 | 77.4 | 96.2 |
奥羽大学歯学部 | 41.2 | 49.0 | 51.0 |
東京歯科大学 | 71.1 | 69.5 | 71.1 |
昭和大学歯学部 | 70.4 | 67.0 | 72.9 |
日本大学歯学部 | 48.5 | 44.5 | 43.0 |
日本大学松戸歯学部 | 30.7 | 37.0 | 51.3 |
日本歯科大学生命歯学部 | 46.9 | 51.6 | 50.8 |
愛知学院大学歯学部 | 42.3 | 44.4 | 47.9 |
大阪歯科大学歯学部 | 39.8 | 46.1 | 48.4 |
福岡歯科大学歯学部 | 39.2 | 33.3 | 46.4 |
2024年の第117回歯科医師国家試験の修業年限内での歯科医師国家試験合格率が40%に届かず、この表への掲載を見合わせた歯学部が8つありました。そのうち合格率が20%台だった歯学部が3校ありました。そういった大学では、「7割以上の学生が留年、国試浪人を経験している」ということです。
ただ、そういった大学でも3割の歯学部生は一度も留年することなく卒業し、歯科医師国家試験も1回で合格しています。
最初に触れた、「私立歯学部6年生の44.9%が留年・休学経験者」を逆の見方をすると、「私立歯学部6年生の55.1%は留年したことなく6年生になった」ということです。
大雑把に言うと「私立歯学部では半数の学生が留年を経験し、半数の学生は留年を経験しない」と言えます。
同じ大学歯学部の学生でも、順調に卒業し歯科医師国家試験にも合格する学生と留年を繰り返し、最悪の場合は放校になってしまうような学生がいるのは、なぜでしょう?
歯学部で留年する学生には6つの特徴があります。
それを、一つひとつ見て行きましょう。
3.歯学部で留年する学生の特徴その1 「勉強習慣がついていない」
歯学部で留年する学生の特徴 その1
それは、「勉強習慣がついていない歯学部生」です。
これまで述べてきたように現在の歯学部は、学ぶべき量が圧倒的に多くなっています。この膨大な量を自分のものとするためには、日々の地道な勉強の積み重ねが欠かせません。そのためには「勉強習慣」が身に付いていないと上手く行きません。
一方で、私立歯学部の学生の多くは学校推薦型選抜(推薦入試)、総合型選抜(AO入試)を経て入学することが当たり前となって来ています。この2つの歯学部入試は、2つ合わせて「年内入試」と言われるように10月、11月に試験が行われます。
遅くとも12月初めには合格して歯学部入学を決める受験生が多くなります。合格が決まれば、受験勉強をする必要は無くなります。そして、翌年4月の歯学部入学まで勉強から離れてしまうことになります。それまで身に付いていた勉強習慣は、どこかに行ってしまいます。
その状況で歯学部に入学することになりますので、勉強習慣が身に付いていない歯学部生が多くなります。
一般選抜(一般入試)で歯学部に入学する学生は、どうでしょうか?
一般選抜から入学してくる歯学部生は2つに分かれます。
国公立大学歯学部を第一志望として、最後まで頑張ったものの結果に結びつかず併願していた私立大学歯学部に入学する学生は、歯学部入学後も勉強習慣に問題はありません。
もう1つの一般選抜組ですが、私立歯学部の学校推薦型選抜を受けたものの合格することが出来ずに一般選抜を受けた受験生の中には、あまり勉強をしていなくて推薦入試に合格出来なかった受験生もいるでしょう。こういうタイプは勉強習慣については怪しいものがあると考えられます。
「一般選抜(一般入試)まで頑張った」といっても、最後までガリガリやったかは分かりません。受験勉強に多くの時間を使えていなかったかもしれません。
いずれにしても、こう言った理由から私立歯学部生の中には、勉強習慣が身に付いていないことから歯学部の勉強をこなし切れない学生が少なくありません。
4.勉強習慣がついていない歯学部生は、こうしたらいい
では勉強習慣が怪しい歯学部生は、どうしたらいいのでしょうか?
まずは自分でルールを考えて下さい。例えば「授業終了後は、すぐには帰らないで図書館で必ず2時間勉強してから帰る」などです。親御さんと「ルールを約束する」のもいいと思います。親御さんにルールを守られたかチェックしてもらうのです。残念なことに留年が決まった時には、親御さんの方から提案していいと思います。
また、「一緒に勉強する友人を作る」こともおススメします。一人で勉強を続けることは簡単なことではありません。それなら仲間を作るのです。2人でも3人でも構いません。とにかく勉強仲間を作ることで、自然と勉強することが当たり前になるでしょう。歯学部生なら誰だって「勉強しないといけない」と思っていますので、親しい人に声を掛けてみてください。
もう一つ、「有料自習室を使う」という方法もあります。
月額料金を払って自習室を使えるようにするのです。お金を払えば誰だって、「無駄にはしたくない」、「損したくない」と思うものです。「もったいないから自習室を使う」ことで自然と勉強することが当たり前になります。
5.歯学部で留年する学生の特徴その2 「勉強方法が間違っている」
歯学部で留年する学生の特徴 その2
それは、「勉強方法が間違っている歯学部生」です。
ちゃんと真面目に勉強をしているのに、なぜが留年してしまう歯学部生がいますが、このタイプの学生です。親から見て、「ちゃんと勉強してるはずなのに、どうして留年したんだろう?」と思う歯学部生です。
確かに真面目に勉強をしてはいますが、そのやり方が間違っているのです。膨大な量をこなさなければならない歯学部には、歯学部の勉強の進め方があります。
なんでもいいから、とにかくガムシャラに覚えようとする歯学部生は多いのですが、このやり方だと歯学部の試験には通用しません。覚えた知識は試験では使えない知識となってしまいます。
何かを覚えようとするときは、その背景まで理解したうえで覚えなければ試験で使える知識とはなりません。「頑張っているのに結果に結びつかない」ことになってしまいます。
実習も同じです。真面目に出席するだけでは試験で合格点を取るのには足りません。
その実習で学ぶべきことは何か、その実習の意味、意義は何か、こういったことを理解して実習に参加し、実習後は知識化する必要があります。
6.勉強方法が間違っている歯学部生は、こうすればいい
では、勉強方法が間違っている歯学部生は、どうしたらいいのでしょうか?
「成績のいい友人、順調に進級している先輩の勉強のやり方を聞いて、そしてまねる」が基本です。
勉強の進め方が間違っていても、自分ではどこが間違っているのか分からないものです。自分で考えても、なかなか答えは見つからないと思います。そうであれば他人を頼るのはいいことです。
上手く行っている人の勉強のやり方と自分の勉強のやり方の違いを見つけて修正することで、歯学部での正しい勉強方法を身に付けることが出来るでしょう。
7.歯学部で留年する学生の特徴その3 「出席も試験もギリギリでいいと考えている学生」
歯学部で留年する学生の特徴 その3
それは、「出席も試験もギリギリでいいと考えている歯学部生」です。
要領のいいタイプとも言えますが、非常に危険なタイプです。
単位取得に必要な出席日数から逆算して、「あと何日休める」と考える歯学部生も少なくありませんが、一見、合理的と思えますが、留年リスクは高いタイプです。
まず、なんといっても授業を担当する先生の印象は当然、悪くなります。そして、何もアクシデントが無ければいいのですが、本当に休まなければならなくなった時に大慌てをします。例えば、けがや病気で入院するようなことがあった時、歯学部留年のピンチが一気に高まってしまいます。出席したりしなかったりで、もともと先生の印象も悪いのですから、大ピンチに陥ってしまいます。
出席しなかった授業は「友達にレジメを見せてもらえば大丈夫」と考えるのでしょうが、それでは歯学部の試験には通用しません。先生は授業の中でレジメには書かれていないことも話しているはずです。レジメに書いてあることも、その背景まで説明してくれているはずです。
授業に出ていなければ、試験に使えない中途半端な知識となってしまいます。
「出席も試験もギリギリでいい」という考えは捨ててください。
8.歯学部で留年する学生の特徴その4 「親が甘い」
歯学部で留年する学生の特徴 その4
それは、「親が甘い歯学部生」です。
膨大な量を身につけなければならない現在の歯学部では、「モタモタしてたら留年してしまう」、「留年は絶対に嫌だ」という、一定の危機感も必要です。ところが、この危機感を無くすような親御さんも見受けられます。
歯科医師の親御さんが「自分も留年したけど、こうしてちゃんと歯科医師になった。
留年したってどうってことない」といったことを歯学部生に話すことがあります。勇気付けようとしての話だと思いますが、言われた歯学部生が「何回留年しても大丈夫、最終的に歯科医師になれればそれでいい」と甘く考えてしまう恐れがあります。
以前、ビルなどを複数持つ地主さんのお子さんの歯学部生を指導していた時、親御さんが「別に歯医者にならなくても心配ない」と子供に話すことがあって困ったことがありました。現実的にビルなどの賃貸収入で優雅に暮らしていけるのでしょうが、本人の意欲を下げるようなことは言わない方がいいでしょう。
企業経営者などにも、こういった親がいそうです。
せっかく、本人は「歯科医師になりたい」と考えて歯学部に進学したわけですから、本人の気持ちを大切にするようにして下さい。
9.歯学部で留年する学生の特徴その5 「部活やアルバイトに忙しい」
歯学部で留年する学生の特徴 その5
それは、「部活やアルバイトに忙しい歯学部生」です。
部活をするために大学に行っているような歯学部生も少なくありません。オールデンタル(全日本歯科学生総合体育大会)で優勝を狙うような部活の練習は非常に厳しいものがあるでしょう。いつの間にか「部活中心の生活」となって勉強に使える時間が全く足りなくなりそうです。
下級生の頃は「先輩に怒られる」で、部活をサボれない。上級生になると「下級生に示しがつかない」ということで、部活をサボれない。こうして、「部活命」の歯学部生が誕生していきます。
アルバイトでは、最初は空き時間に少しやるつもりで入ったアルバイトでも、いつの間にか頼りにされるようになり、「アルバイトの時間がドンドン増えて行く」ということがあります。「アルバイトを募集しても全然、集まらない」という話は聞くと思います。現在は、どこも人手不足で困っています。
いつしか自分でも「自分がいなければ、ここは回らない」と感じるようになり、同時に雇い主から、「頼りにしてる」と言われると断りにくくなり、気が付けばアルバイト中心の生活になってしまう、というのは珍しいことではありません。
中には、塾講師や飲食業などアルバイト先の仕事こそが自分のやりたい仕事だ、と考え歯学部をやめてしまう学生もいるようです。それを否定するつもりはありませんが、歯学部生である限りは歯学部生としての学生生活が第一のはずです。
そのことを忘れないようにしてください。
10.歯学部で留年してしまう学生の特徴その6 「成績のいい友人がいない」
歯学部で留年してしまう学生の特徴 その6
それは、「成績のいい友人がいない歯学部生」です。
成績のいい友人は、いいお手本です。先ほども「勉強方法が間違っている歯学部生」の項で述べましたが、成績のいい友人がいれば歯学部での正しい勉強方法を教えてもらったり、分からないことを聞いたりすることが出来ます。しかし、成績のいい友人がいないと、そういったことが出来ません。
成績のいい同級生を眺めているだけで、なかなか厳しい状況から抜け出せないままになりがちです。
また、成績の良くない友人と慰めあったりすることはあっても、どうしたら余裕で進級できるようになることが出来るのか分からないままになってしまいがちです。こういう状況では歯学部での生活も楽しくないのではないでしょうか?
11.成績のいい友人がいなかったら、こうすればいい。
成績のいい友人がいない歯学部生は、どうしたらいいのでしょうか?
あまり親しくない人であっても成績のいい同級生に授業での疑問点を聞いてみることです。
きっと、嫌がらずに教えてくれると思います。そうしていくうちに少しずつ親しくなっていくでしょう。
「そうは言っても話しかけにくい」ということであれば、成績のいい人が勉強しているそばで勉強をして下さい。お互いに「いつもいるな」と思うようになります。そしていつも近くで勉強している人なら、声をかけやすいでしょう。
最初は質問である必要はありません。なんでもいいので、話しかけることが出来ればそこから距離は縮んで行きます。
成績のいい人が、友達の友達であればそこを上手く使うのもいいでしょう。
何とか成績のいい友人を作ることを考えてみてください。
12.歯学部で留年しないために
歯学部で留年してしまう学生の特徴を6つ挙げました。「こんな人いるいる」と思った歯学部生の方もいるのではないでしょうか?
「これ、うちの子だ」と思われた親御さんもいるかもしれません。
歯学部の勉強は非常に厳しいものがあります。九州大学歯学部の「6年間一度も留年することなく、歯科医師国家試験も1回で合格」する学生の割合は、直近3年間全て50%台です。旧帝国大学の歯学部でもこういった状況です。
留年を重ね、残念なことに放校や自主退学となってしまう歯学部生もいます。一方で、順調に進級、卒業し歯学部卒業と同時に歯科医師国家試験にも合格する学生も少なくありません。
正しい勉強方法で、日々の積み重ねを大切にして、やるべきことをきちんとこなしていけば歯学部で留年することはありません。
進級に不安のある歯学部生や親御さんは一度、歯学部での進級対策に特化したデントゼミのような予備校に相談してみるのもいいと思います。これまで多くの歯学部生の進級の後押ししてきていますので、「自分のどこが良くないのか」、「どうすればいいのか」を具体的、的確に教えてくれると思います。
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